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受験專門塾
碩学ゼミナールの衣笠です。
令和7年度 第1回基礎学力テスト(社会)分析
令和7年度の第1回基礎学力テストの問題を分析しました。
全体としては「やさしくもなく、難しくもない」、例年通りの難易度だったと思います。
すべての問題を難易度別に分類した結果は次の通りです。
区分 問題数
基本問題 16問
基礎・標準問題 15問
標準問題 11問
ハイレベル問題 5問
合計 47問
このデータをもとに、得点レベル別に次のように分類しました。
レベル 目標得点 問題数
A 60点レベル 29問
B 70点レベル 6問
C 80点レベル 7問
D 90点レベル 5問
この結果から、Aレベル29問を完全に正解すれば、ほぼ60点が取れることになります。
社会が苦手で、まず60点を目標にしている生徒は、このA問題をマスターすることが最短で、最も確実な方法です。
指導者は、この資料を生徒に示し、焦ることなく基礎を固める大切さを伝えるべきだと思います。
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各設問の分析と考察
社会は「暗記」が中心の科目ですが、解法テクニックを使うことで点数を安定して取ることができます。
今回は特に気になった15問について、実際の出題内容を踏まえて解説します。
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【1】(3)焼き畑農業
アマゾン川流域で行われている農業のサイクルを図で示して、何農業かを答えさせる問題でした。
これまで類似問題があまりなく、図から読み取るタイプであったため、正答率は低かったと予想します。
ただ、この「焼き畑農業」は、地理の教科書(帝国書院出版)P113の本文中に黒の太字で明記されています。
私は「黒の太字の語句は、頻出でなくても必ず暗記して説明できるようにしておくこと」と指導しています。
この方針を守っていた生徒は、確実に正解できたと思われます。
難易度判定は【C】としました。
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【1】(8)時差の問題
私は、時差の問題を難易度で3段階に分けて解説しています。
今回の問題は、その中でも最も基本的なレベルにあたります。
しかも、D国の時間を計算して書かせるのではなく、4つの選択肢の中から選ばせる形式。
過去20年間の基礎学で出題された時差の問題の中では、最も易しいレベルでした。
時差の問題は、基礎学第1回・第2回・第3回、そして入試本番の4回のうち、出題されなかった年はありません。
第1回に出題された場合、残りのどこかで再度出題される確率が高いと考えます。
今回は基礎レベルでしたので、次回は発展レベルの時差問題が出る可能性が高いと見ています。
塾では、この「発展」レベルの問題を10題作成し、事前に生徒へ配布して繰り返し練習させました。
難易度判定は【A】です。
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【2】(3)境港市に関する問題
「わが国で最も人口が少ない都道府県」という説明があり、答えは当然「鳥取県」です。
この部分だけなら小学生でも答えられますが、テスト本番では緊張による読み飛ばしミスが起きやすい箇所です。
基礎学では、あえて簡単な問題を、少し回りくどい説明で問うことがあります。
そのため、問題文のキーワードには必ず線を引いて確認する習慣が大切です。
難易度判定は【A】です。
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【3】(2)雨温図の問題
地図上にX・Y・Zの3市が示されています。
X市=富山市(富山県)/Y市=長野市(長野県)/Z市=静岡市(静岡県)
この問題は、地名がわからなくても解けます。
まず、冬に雨が多いのが日本海側=富山。
雨が少なく、気温も低い高地が長野。
太平洋側で、比較的温暖で雨が多いのが静岡。
このように、気温と降水量のパターンから地域を判断する練習をしていれば、正答にたどり着けます。
難易度判定は【A】です。
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【3】(3)県の特徴を表から読み取る問題
地図上にP・Q・R・Sとアルファベットで県が示され、
表には「人口密度」「米の収穫量」「ぶどうの収穫量」「海面漁業漁獲量(t)」が並んでいます。
このような資料読み取り問題は、徳島県の基礎学・入試で頻出なことで有名です。
ここでまず、愛知県・静岡県・山梨県・新潟県の特徴を思い出します。
愛知県=自動車工業が盛ん・キャベツ出荷量2位/静岡県=お茶出荷量1位/山梨県=ぶどう・ももの生産ともに1位/新潟県=米の生産1位(2位は北海道)。
まず、ぶどうの生産が最も多いR県=山梨県と予想できます。
しかもR県は海面漁業漁獲量が0。この点からも、海に面していない山梨県と確定。
次に、米の収穫量が最も多いS県=新潟県です。
残る愛知・静岡の2県は、完全に暗記していなくても推測で対応できます。
ウの県=人口密度457.2人・漁獲量147(千t)/エの県=人口密度1445.3人・漁獲量38(千t)。
静岡は漁業が盛んで、愛知は名古屋など大都市が多い。
したがって、ウ=静岡県、エ=愛知県と判断できます。
数値そのものを暗記する必要はなく、特徴を思い出して論理的に答を絞る練習が重要です。
難易度判定は【C】です。
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【3】(4)施設園芸農業
P県(愛知県)やQ県(三重県)で行われている農業として、
ガラス温室やビニルハウスなどを利用して野菜・果物・花などを育てる農業を答える問題でした。
ここで「促成栽培」と答えた生徒が多かったようですが、
問題では「農業の種類」を問われています。
正答は施設園芸農業です。
地理(帝国書院)教科書P227に、黒の太文字で明記されています。
問題集であまり見ない語句でも、教科書の黒太字は要チェックです。
難易度判定は【A】です。
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【3】(6)北陸地方の工業生産
北陸地方で、雪どけ水の水力発電を利用して生産されているものを答える問題。
正答はアルミニウムです。
過去20年間の基礎学で、私自身も初めて見たタイプの問題でした。
ただし教科書P231にはアルミニウムの記述があります(黒太字ではありません)。
冷静に考えれば、選択肢のうち
「ピアノ」「オートバイ」「毛織物」を消去し、
残った「アルミニウム」を選ぶのが正しい手順です。
「わからない」と感じた瞬間に勘で選ばず、消去法で残す判断力を鍛えることが大切です。
難易度判定は【C】です。
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【3】(8)中京工業地帯の発展理由
中京工業地帯で自動車工業が発展した理由を、「すべて選びなさい」と問う問題でした。
正答数を指定していないため、複数選択問題であり、難易度が格段に上がります。
ア〜エの選択肢のうち、
ア=信濃川の工業用水✖/イ=繊維工業が発展し自動車工業の土台となった△(はっきりしない部分があるので「保留」)
/ウ=石炭が取れた✖/エ=海上輸送の利便性◎。
アとウを消去できれば、答は複数と判断し、イとエの2つを選択できます。
「すべて」とある場合、1つだけが正解ということはまずありません。
消去法+複数選択の練習をしておく必要があります。
難易度判定は【D】です。
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総評
社会は単なる暗記科目ではなく、知識を使う力が問われます。
Aレベル問題を完璧に固め、B・C・Dレベルへと段階的に伸ばすこと。
「急がば回れ」、それが最短の合格への道です。
指導者は、正答率の低い問題を単なる「難問」とせず、
生徒が「なぜ間違えたのか」「どの思考が抜けていたのか」を具体的に指摘してあげるべきだと考えます。
それが真の学力の土台を築く指導と言えます。

碩学ゼミナール塾長・衣笠 経歴
城西中学・城北高校を経て、立命館大学経済学部を卒業。
大学卒業後は「保険毎日新聞」に記者として入社し、報道の現場で社会の現実を見つめる日々を送る。
その後、地元に戻り、県内大手進学塾にて本部長・教務部長・校舎長を歴任。香川県下7校舎の統括責任者として、多くの生徒の進路指導に携わってきた。
現在も毎朝、水を2杯飲み、5分間の瞑想と8分間の感謝日記、
軽い筋トレで心と身体を整えることが日課となっている。
科学・医学・教育に関する専門書を好んで読み、授業計画では思春期心理学や実証的な教育実践の論文を積極的に取り入れている。
どれだけ経験を重ねても、学びを止めた瞬間に傲慢が生まれる。
それが生徒の信頼を失うことにつながると、常に自戒している。
また、「どれほど立派な授業をしても、生徒が本当に成長しなければ価値がない」との考えをもつ。
だからこそ、入塾した生徒一人ひとりに真摯に向き合い、
保護者のご期待にも、誠実に応え続けることを自身の使命としている。
座右の銘は、「愚者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶ」。
趣味は読書と野球観戦。家族とともに、辛口カレーライスをこよなく愛す。
元認定教育コーチ、青少年育成協会元研究員。母親向けの子育てセミナーの講師も手がける。