2025/11/07 (金) - ブログ

「思秋期」の特徴と親の対応(中1・中2版)

城東高校・徳島北高校
城南高校・徳島市立高校
 受験專門塾
  碩学ゼミナールの衣笠です。

お世話になっています
先日、中3の保護者の方に「思春期の反抗」についてご説明したところ、想像以上の反響がありました。

そこで、加筆・修正して中1・中2向けの文章を作成しました。

お時間のある時にでも御一読ください。
ご家庭での指導に、少しでもお役に立てば幸いです。

また、ご質問等ございましたら、マメールいただければ返信します。
よろしくお願いします。
令和7年11月4日
 碩学ゼミナール
 衣笠

 

「思春期の“反抗”は、心が大人へと成長している証です。」
碩学ゼミナール 塾長 衣笠邦夫

思春期を迎えたお子さんが、突然強い言葉を口にしたり、親の言葉に反発したりする。
そんな姿に戸惑い、悲しくなる親御さんは多いと思います。

「うちの子はどうしてしまったのか」「このままでは我儘な子になるのでは」と心配される気持ちは痛いほど分かります。

少し私事になりますが——
高校時代には母親に「クソばばあ!」と言っていた長男も、

30歳を過ぎ、社会人として年月を重ねる中で、
今ではこちらから聞かなくても、

私たちの子育てに「ありがとう」と感謝の言葉をかけてくれるやさしい人間になりました。

あの反抗の時期に間違った対応をしなかったので、いま穏やかに親子で笑い合えるのだと、心から思います。
それまで穏やかで素直だった子どもが、

ある日突然、「うるさい」「くそばばあ」と言い放つ――。

そんな言葉を聞くと、親としては深く傷つき、

「うちの子は変わってしまった」と感じるかもしれません。

けれども、これは異常ではなく、思春期における自然で健康な成長反応です。

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反抗は“脳の成長過程”そのもの

近年の脳科学研究では、思春期の反抗的な行動は「脳の発達段階」に起因することが分かっています。

アメリカUCLA大学の神経生物学者エイドリアン・レイン博士、

ハーバード大学のローレンス・スタインバーグ教授らの研究によれば、

12〜18歳の思春期では、感情を司る「扁桃体」が先に成熟し、

理性や共感を制御する「前頭前野」の発達が後から追いついてくることが知られています。

扁桃体は怒りや不安などの感情を動かす“アクセル”、

前頭前野は冷静さや判断力の“ブレーキ”です。

思春期とはつまり、「感情のアクセルが全開で、ブレーキがまだ未完成」の状態。

MRIを用いたハーバード大学のリーディー博士の研究では、

親が注意をした瞬間、子どもの扁桃体が「攻撃された」と過剰に反応する様子が確認されています。

つまり、親の何気ない一言が、子どもには「否定された」と誤って伝わってしまうのです。

さらにドイツ・ライプツィヒ大学の研究によれば、

思春期初期に増える性ホルモン(テストステロン・エストロゲン)が、

脳のドーパミン回路を刺激し、「快・不快」「好き・嫌い」の反応を強めることも分かっています。

だからこそ、お子様自身も「なぜこんなにイライラするのか分からない」という状態に陥るのです。

その混乱をぶつけられる一番安心できる相手――それが親なのです。

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■ 「受け止める」ことと「甘やかす」ことの違い

ここで大切なのは、子どもの反抗にどう向き合うかです。

「子どもの言葉を『受け止める』と『甘やかす』ことになるのでは」と心配される方が多いですが、

この二つは似ているようでまったく違います。

『受け止める』とは、子どもの感情に共感しつつ、行動には責任を持たせること。

『甘やかす』とは、感情に流され、行動の責任まで免除してしまうことです。

たとえば——
スマホをやめる約束の時間の22時になっても、友達とスマホで話をしている子どもに注意した場面。

子どもの反応はー。

子ども:「うるさい!(制限時間はあるけど)放っておいて!スマホやめないから」

 

受け止める親の対応:

「友だちと話してる途中なんだね。楽しい時間なんだと思うよ。

でも、約束の22時は守ろう。あと5分で終わるようにする? それとも朝15分早く起きて(友達と)続きの話をする?」

→ 気持ちは理解してもらえたという安心感が残り、ルールも守る。

これが“受け止めながらしつける”対応です。

 

甘やかす親の対応:

「じゃあ今日は特別にいいよ」

→ 一時的には平和ですが、「強く言えば通る」と学習させ、我儘を強化します。

また、

子ども:「疲れたから宿題したくない」

というとき、

受け止める親の対応:

「部活で疲れたんだね。今日は無理もないね。

夕食後20分休んでから、英語プリント1枚だけやろう。終わったらゆっくりお風呂に入ろう。」

→ 感情を尊重しつつ、行動への責任を促します。

このように、受け止めるとは「気持ちはわかる。でも、やるべきことはやる(やらせる)」という姿勢です。

それが、「本物のしつけ」につながっていきます。

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■ なぜ「褒めても反発」するのか

スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドゥエック教授によると、

思春期の子どもは「評価されること」よりも「理解されること」を求めているといいます。

だからこそ、親に褒められても「コントロールされている」と感じる時には反発します。

つまり、「本心で言ってるの?」「(私のことを)信じてる?」という

“愛情の確認”としての反抗なのです。

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■ 反抗期=自立への訓練期間

発達心理学者エリク・エリクソンは、青年期を「自我同一性(アイデンティティ)の確立期」と定義しました。

親に反論し、自分の意見を持ち始めるのは、社会に出て自分の足で立つための練習。

このときに親が「反抗するな!」と感情的に押さえつけると、

子どもは「自分の感情は間違っている」と学び、

やがて他人の顔色ばかり気にする大人になりがちです。

反対に、「気持ちはわかる」と受け止められた経験は、

“自分の感情は尊重されていい”という信頼感を育て、

のちに安定した人間関係を築く土台になります。

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「反抗期がない」子どもも大丈夫

中には、反抗期らしい反応をあまり見せない子もいます。

それは性格や表現の仕方の違いであり、成長が遅れているわけではありません。

外に出さず、内面で静かに気持ちを整理するタイプの子もいます。

反抗がある・ないよりも、親との信頼関係が保たれているかが大切です。

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親にできる最も大切なこと

思春期の子どもに必要なのは、「説教」でも「放任」でもありません。

それは、安心して反発できる関係を保つことです。

「どんな言葉を投げられても、私はあなたを嫌いにならない」

この態度が伝わると、子どもは無意識に「自分は大切にされている」と感じます。

愛情と筋を両立させること。

それが、「甘やかさず、受け止める」子育てです。

思春期は嵐のような時期ですが、必ず晴れます。

今は扱いづらく見える言葉の裏に、成長への苦しみと不器用な愛情が隠れています。

10年後、お子さんが社会で立派に働くようになったとき、

「中学生のときは本当にごめんね」「酷い態度を我慢してくれてありがとう」

と感謝の言葉を伝える日が、きっと訪れます。

どうか焦らず、感情をぶつけず、

「あなたの存在そのものを大切にしている」という姿勢を、日々の態度で伝え続けてください。

それこそが、思春期の心を健やかに通過させる最良の薬になります。

(了)

 

 

【 中1から中3の入塾条件 】

SSクラス 学年成績10番以内程度

S1クラス 学年成績上位25%程度

S2クラス 学年成績上位50%程度以上の生徒

                が入塾可能です

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碩学ゼミナール塾長・衣笠 経歴
城西中学・城北高校を経て、立命館大学経済学部を卒業。
大学卒業後は「保険毎日新聞」に記者として入社し、報道の現場で社会の現実を見つめる日々を送る。
その後、地元に戻り、県内大手進学塾にて本部長・教務部長・校舎長を歴任。香川県下7校舎の統括責任者として、多くの生徒の進路指導に携わってきた。
現在も毎朝、水を2杯飲み、5分間の瞑想と8分間の感謝日記、
軽い筋トレで心と身体を整えることが日課となっている。
科学・医学・教育に関する専門書を好んで読み、授業計画では思春期心理学や実証的な教育実践の論文を積極的に取り入れている。
どれだけ経験を重ねても、学びを止めた瞬間に傲慢が生まれる。
それが生徒の信頼を失うことにつながると、常に自戒している。
また、「どれほど立派な授業をしても、生徒が本当に成長しなければ価値がない」との考えをもつ。
だからこそ、入塾した生徒一人ひとりに真摯に向き合い、
保護者のご期待にも、誠実に応え続けることを自身の使命としている。
座右の銘は、「愚者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶ」。
趣味は読書と野球観戦。家族とともに、辛口カレーライスをこよなく愛す。
元認定教育コーチ、青少年育成協会元研究員。母親向けの子育てセミナーの講師も手がける。