城東高校・徳島北高校
城南高校・徳島市立高校
受験專門塾
碩学ゼミナールの衣笠です。
【保護者の皆さまへ】
「気持ちを言葉にするだけで心が落ち着く」──科学と実践に基づく心の整理法
お子様が不安や怒りを感じたとき、親としてできる最善の対応とは何でしょうか?
近年、心理学と脳科学の研究から、「感情を言葉にすること」が気持ちの整理に非常に有効であることが明らかになってきました。
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■ 【研究紹介】感情を言葉にすると、脳は落ち着く──UCLA実験より
この研究は、2007年にUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のマシュー・D・リーバーマン教授によって発表されました。
リーバーマン教授は、脳の働きを通して「人間の感情と社会的なふるまいの関係」を明らかにすることをテーマに研究を続けている、世界的に著名な心理学者です。
▼ 実験の流れ
研究チームは、健康な成人30名を対象に、不快感や恐怖を呼び起こす「クモの写真」や「怒った表情の人物写真」を見せました。その直後、被験者たちは3つの異なる方法で反応するように指示されました。
行動 内容
① ただ見るだけ 怖い画像を見ても何も言わず、ただ黙って見る
② 特徴を説明する 「男の顔」「クモの脚が長い」など、感情を交えず冷静に特徴だけを言う
③ 感情を言葉にする 「怖い」「気持ち悪い」など、自分の感情をそのまま言葉にする
被験者の脳はfMRI(機能的磁気共鳴画像)によってスキャンされ、「感情を処理する『扁桃体(へんとうたい)』」と、
「感情をコントロールする『前頭前野』」の活動が測定されました。
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■ 【詳細な結果と意味】──「言葉にする」ことで脳が変わる
実験結果は非常に明確かつ興味深いものでした。
まず、「ただ見るだけ」のグループでは、恐怖や嫌悪の感情を感じたときに脳内で強く反応する「扁桃体(へんとうたい)」が過剰に活性化していました。
扁桃体は、人間が危険や不安を察知したときにすばやく反応する、いわば「心の警報装置」です。この部分が反応しているとき、私たちの脳は「身を守ること」に集中し、冷静な判断がしにくくなります。
一方で、感情をコントロールする役割を持つ「前頭前野」はほとんど活動せず、被験者の脳は感情に飲み込まれたままの状態になっていました。
「特徴だけを説明した」グループでは、少しだけ前頭前野の活動が見られましたが、扁桃体の反応は依然として高いままで、大きな安心や安定にはつながっていませんでした。
しかし、「感情を言葉にした」グループでは、明らかに違う変化が脳の中で起きていました。
• 恐怖や不安に反応する扁桃体の活動が平均で17%も低下し、脳が「恐怖モード」から抜け出し始めました。
• 同時に、感情の整理や自己制御を担う前頭前野(特に右腹外側前頭前野)が21%活性化。理性的に気持ちを落ち着ける準備が脳内で進んでいたのです。
これはつまり、「今、自分が何を感じているのか」をただ言葉にしてみる──たとえば「怖い」「腹が立つ」「モヤモヤする」と声に出す、または書く──だけで、脳の中ではすでに落ち着きと回復のプロセスがスタートしているということです。
この反応は一時的な安心感をもたらすだけではありません。感情を適切に言葉にする経験を重ねることで、子どもたちは「感情と上手につきあう力」=「情動調整力」を育てていけるのです。
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■ 感情を「言葉にする力」が子どもの心を守る──脳科学と大学研究に基づく実証と習慣づくり
お子様が不安や怒りを感じているとき、私たち大人はどう関わるべきでしょうか。
「泣かないで」「そんなこと気にしないで」と励ましたくなるのが親心ですが、実は、もっとも心が落ち着く方法は、その気持ちを自分で言葉にして整理できるようになることです。
これは近年の脳科学や心理学の研究でも繰り返し確認されており、特に**「扁桃体(へんとうたい)」と「前頭前野」**という2つの脳の働きに注目が集まっています。
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■ 「扁桃体」と「前頭前野」──感情の暴走とブレーキの仕組み
脳には感情に関係する部位がいくつかありますが、特に重要なのがこの2つです:
● 扁桃体(へんとうたい)とは?
• 怖い、恥ずかしい、腹が立つ、不安だ…そんな「感情が一気に湧き上がる」ときに反応する脳の部位です。
• いわば「心のセンサー」「警報装置」のような働きがあり、命の危険や人間関係のストレスなどに対して瞬時に反応します。
• 扁桃体が強く反応しているとき、人は冷静な判断ができなくなります。
● 前頭前野とは?
• おでこの奥にある、人間の脳の中でも最も理性的な部分です。
• 感情をコントロールしたり、「まあまあ落ち着こう」と気持ちにブレーキをかける役割があります。
• また、計画的に考える力や、「今何をすべきか」を判断する力もここにあります。
この2つのバランスが崩れると、たとえば:
• 「イヤなことがあった!」→ 扁桃体が強く反応 → 前頭前野が働かない → 気持ちが暴走 → 行動や言葉が荒くなる
逆に、気持ちを整理したり、誰かに話したり、ノートに書いたりすると:
• 「今、落ち込んでるんだ」と言葉にする → 扁桃体の活動が弱まる → 前頭前野が働き始める → 落ち着いて対応できる
このように、**「気持ちを言葉にすること」自体が、脳にとっては“落ち着くスイッチ”**になるのです。
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■ ジャーナリングの効果──大学の研究からも裏づけ
この「気持ちを言葉にする」力を育てる手段の一つが、今注目されているジャーナリングです。
ジャーナリングとは、自分の感情や考えをノートや紙に自由に書き出す習慣のことです。
この効果については、アメリカの大学をはじめ多くの研究で実証されています。
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■ スタンフォード大学の研究(Kross & Ayduk, 2010)
この研究では、参加者に「自分がこれまでに経験したつらい出来事」を思い出してもらい、その体験について文章を書くという課題を与えました。被験者は2つのグループに分けられました。1つ目のグループは、その時に感じた感情を率直に、ありのままに書くように指示されました。
例えば、「あのときすごく悲しくて、どうして自分ばかりこんな目にあうのかと思った」など、自分の気持ちをそのまま言葉にします。2つ目のグループには、同じ体験について書くように求められましたが、感情に流されずに「なぜ自分はそう感じたのか」「その出来事にはどんな意味があったのか」など、より論理的・客観的に振り返るように指示されました。
その結果、両グループともに共通して、脳の感情処理を担う扁桃体の活動が低下し、思考や自己コントロールを担う前頭前野の働きが高まっていたことが分かりました。
特に注目すべきは、「感情をそのまま正直に書いたグループ」で、その後のストレスに対する耐性が高まり、落ち込む代わりに前向きな行動を取る傾向が強まったという点です。
つまり、自分の感情を抑え込むのではなく、紙に書き出して外に出すことが、心の整理や回復につながる可能性を示唆しているのです。
■ ペンシルバニア州立大学の研究(2018)
この研究では、大学生を対象に、日常的なストレス要因、たとえば「就職活動に対する不安」や「人間関係の悩み」などについて、毎日数分間、自由に文章を書くという取り組みを行いました。
被験者は2つのグループに分かれ、
1つは「日記のように感情を書く」グループ、
もう1つは「何もしない(書かない)」グループです。
1週間後、文章を書いていたグループの学生たちは、不安やイライラといった感情の自覚症状が、何もしなかったグループと比べて明らかに低下していることが確認されました。
さらに、毎日感情を書き出すという習慣を通じて、自分の内面に注意を向ける力、つまり「内省力」が高まっていたことも明らかになりました。
これは、日々の小さな気づきが積み重なることで、自分の感情の変化に敏感になり、ストレスの早期対処が可能になることを意味しています。
このように、感情を言葉にして書くという行為は、単なる気晴らしや日記以上に、脳の働きや心の健康に良い影響を与えることが科学的にも示されているのです。
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■ 書くことで感情の“消化”が進む
こうした研究を通じて、分かってきたのは次のことです:
感情は、ため込むと悪化する。
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■ 日常の中でできる:家庭でのジャーナリング実践法
ジャーナリングには特別な準備も技術もいりません。
子どもでも、大人でも、すぐに始められます。
● 使う道具
• ノートとペン、またはスマホのメモアプリでもOK
● タイミング
• 朝の数分、または寝る前に5〜10分ほど
● 書く内容(例)
• 今日いちばん印象に残ったこと
• 今、心にあるモヤモヤ・不安・うれしかったこと
• 「今の自分は何を感じているか?」のひとことメモ
• 明日やってみたいこと
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■ まとめ:「書くこと=こころの整理整頓」
子どもが感情に飲み込まれそうなとき、親としてできることは、感情を抑えつけることではなく、出せるようにすることです。
そして、その第一歩は「言葉にしていいんだよ」と伝えること。
さらに、ノートにそっと書く時間をつくるだけで、脳の中では扁桃体の興奮が静まり、前頭前野が働きはじめ、子ども自身が自分の気持ちに折り合いをつけていく力が育っていきます。
書くという静かな習慣は、**子どもが一生使える“こころのスキル”**になります。
ぜひ、家庭の中で気軽に取り入れていただければと思います。
参考資料 2025年3月時点 各高校の公式ホームページの発表
国公立大学合格人数【最新情報】(現役生合計!)
城東高校 162名(58.9%)(卒業生275名)
城南高校 168名(56%)(卒業生300名)
徳島市立高校 141名(44.5%)(卒業生317名)
城ノ内中等教育高校(城ノ内高校)86名(67.7%)(卒業生127名)
徳島北高校 150名(56.6%)(卒業生265名)
城北高校 67名(24.7%)(卒業生271名)
鳴門高校 21名(7.8%)(卒業生270名)
◎合格者は、全て正確な数字です。卒業生の人数が、HPの発表と比べてわずかに異なる場合が考えられます。
その場合、国公立大学への合格割合が0.5%程度変動する場合があります。ご了解頂ければ幸いです。
碩学ゼミナール塾長・衣笠 経歴
城西中学・城北高校を経て、立命館大学経済学部を卒業。
大学卒業後は「保険毎日新聞」に記者として入社し、報道の現場で社会の現実を見つめる日々を送る。
その後、地元に戻り、県内大手進学塾にて本部長・教務部長・校舎長を歴任。香川県下7校舎の統括責任者として、多くの生徒の進路指導に携わってきた。
現在も毎朝、水を2杯飲み、5分間の瞑想と8分間の感謝日記、
軽い筋トレで心と身体を整えることが日課となっている。
科学・医学・教育に関する専門書を好んで読み、授業計画では思春期心理学や実証的な教育実践の論文を積極的に取り入れている。
どれだけ経験を重ねても、学びを止めた瞬間に傲慢が生まれる。
それが生徒の信頼を失うことにつながると、常に自戒している。
また、「どれほど立派な授業をしても、生徒が本当に成長しなければ価値がない」との考えをもつ。
だからこそ、入塾した生徒一人ひとりに真摯に向き合い、
保護者のご期待にも、誠実に応え続けることを自身の使命としている。
座右の銘は、「愚者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶ」。
趣味は読書と野球観戦。家族とともに、辛口カレーライスをこよなく愛す。
元認定教育コーチ、青少年育成協会元研究員。母親向けの子育てセミナーの講師も手がける。