碩学ゼミナールにも、塾生に、とくに中3生に繰り返し繰り返し語って聞かせる三つの教えがあります。
一つ目は、「家のお手伝いをしなさい」ということ。
二十数年前になりますが、東京都が小学生に対して学力の大規模調査したことがありました。
その中で知能指数が同じなのに通知表がオール5の生徒とオール1の生徒の生活実態を分析すると、二つの項目が顕著に正反対の結果を示していたといいます。
知能指数が同じにも関わらず、全く違う成績結果が出た生徒に大きな違いが現れた二つの項目とは、
家のお手伝いとテレビ視聴時間(当時、まだ携帯電話もパソコンも普及していませんでした)
通知表がオール5の生徒は、よくお手伝いをしており、「一日一時間以上テレビを見ない」というようなテレビ視聴ルールが、家庭内にある
しかし、同じ知能指数なのに通知表がオール1の生徒は、家のお手伝いをほとんどしない。テレビは、見たいだけ見るという特徴がありました。
ある時、碩学ゼミナールの成績上位者が集まる中2Sクラスで「今週、三日以上きちんとお手伝いをしたと言える人手を挙げて」というと、7割くらいの生徒の手がサッと挙がったので感心しました。
また、公立中学の陸上部を指導して7年間で日本一の選手を13回輩出したカリスマ陸上コーチのH先生は、部員に必ずお手伝いをさせて、毎日直接電話で報告させていました。
そのH先生が、日本ランキング一位で大会優勝が確実視されていた女子選手が最後の試技に失敗して泣きながら告白した話を紹介していました。その女子選手の話によると「優勝は確実と安心してしまって、試合前の一週間家のお手伝いをサボった。それが優勝を逃した最大の原因だと思う」とのことです。
また、ある有名な塾の塾長は、特別に預かった成績不振の生徒に関して、いろいろ手を尽くして教えたが全く成績が上がらず、成績を上げることは無理だから、せめて後々本人の役に立つように、家のお手伝いをすることを指導した。すると、教科指導は今までと同じなのに、急に成績が上がりだしたと、ご自身の著書に書かれています。
碩学ゼミナールでは、学習指導の三者面談では、必ず毎日10分程度、家での生徒の役割として毎日お手伝いをすることを、生徒本人と保護者の方に強く勧めています。
私自身は、「目標を達成した結果精神力がつくのではなく、目標達成のために、自分で決めたことを、毎日やり抜く過程で、精神力がつく」という考え方を信じています。
ここでは、「毎日続ける」ということが重要。簡単にできる日もあれば、どうしても気分の乗らない日もあります。でも、その日も自分で決めたことなので、イヤな気持ちに打ち勝って我慢してやる。そのことで精神が鍛えられる。その結果、自己評価が高まり、
自分は、決めたことをやり抜いているんだという自信が生まれる効果があります。
毎日続けるために、家のお手伝いが最も適している理由は、両親に感謝されるから。ちょっとした感謝の言葉や満足そうな両親の表情が、毎日続ける大きなエネルギーとなります。
また中3生には、「受験勉強はほとんどの場合、大部分が自分のためにする行為。人は自分のためにだけ生きると心が狭くなりイライラする。一日10分、他の人のために奉仕すると心が広く暖かくなる。安心感がえられる。だから冷静に目標に向かって努力を続けられるようになるよ」と話しています。
授業中に書かせるメンタルシートの、「満足する成績で志望校に合格するためには何が必要だと思いますか」という問に、毎年多くの生徒が「家のお手伝いを毎日続けること」と書きます。
これは、衣笠が教えたからではなく、実際に実践してその効果を実感しているからだと思います。
一分でも惜しんで、机に向かう受験終盤。「志望校合格を目指すなら、何が何でも毎日10分は家のお手伝いをしなさい」と教える進学塾は、やはり少し個性的かなとも思います。
碩学ゼミナールが塾生に伝える三つの教えの一つ目は「家のお手伝いをすること」です。
衣笠
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