2024/12/17 (火) - ブログ

思春期の子どもとの「会話のコツ」とは?

城東高校・徳島市立高校理数科
県立上位高校(城南・城ノ内・徳島北高)
受験專門塾
碩学ゼミナールの衣笠です。

思春期のお子さんとのコミュニケーションが難しいと感じている親御さんは少なくありません。特に、思春期の子どもたちは親に対して心を閉ざすことが多く、その理由はさまざまです。しかし、「聞き方」を工夫することで、親子の関係を改善し、子どもの心を開かせることができるかもしれません。

 《 佐々木正美医師が取り組んだ、少女の心の治療 》

児童精神科医の佐々木正美医師は、著書『抱きしめよう、わが子のぜんぶ』(大和出版)の中で、子どもの依存欲求は「真剣に受け止めてくれた」と感じられたときに満たされると述べています。

その一例として、援助交際をしている少女たちの心の治療について次のように書かれています:
「そんな少女たちと向き合って、30分なり40分なり、話を聞いていくわけです。

話しを聞くときは、彼女が主役を演じられる話題を注意深く選びます。私の方が不案内で、彼女たちのほうがよく知っている若者の現代文化、たとえばファッションとか音楽などが話題となります。

こちらが知らないことですから、ときどき『それはどんなこと?』などと教えてもらいながら、じっくり聞いているとみんないきいきと語ってくれます。そのときに大切なのは、相手がどんな思いで、何を語ろうとしているのか、純粋に興味をもち、楽しみ、関心をもって聞くことです。

ひたすら聞く。『本気で聞く』のです。何か月も聞き続けます。こちらからはほとんど何もいいません。時間いっぱい、ただ聞いているだけです

(略)自分から打ち明けたいと思う気持ちがわいてくるまでだまって聞き続けます。1か月、半年、時には1年以上かかってしまうこともありますが、辛抱強く待つのです。」

佐々木医師は、こうして話を聞き続けていくと、必ず少女が心を開く瞬間が訪れると述べています。それまで我慢強く、待って聞き

続けて、そのタイミングが訪れたとき、初めて本格的な治療が始められると書かれています。

しかし、多くの場合、佐々木医師のように思春期の子どもから長時間話を聞き続けることは困難です。その背景には、たとえ気持ちがあっても、思春期の子どもに適切に対応するための話し方の技術やコツが不足していることが挙げられます。

そこで今回は、思春期の子どもとの会話を成功させるコツについて、詳しく調べてみました。

 

《 思春期の子どもとの会話のコツ 》

思春期の子どもは、進路、勉強、友人関係などで悩みが多く、心が揺れ動く時期です。そんなとき、親が安心して話せる存在になることが大切です。「聞く姿勢」と「共感」を基本にし、子どもが自分の気持ちを自然に話せるような工夫を取り入れましょう。以下に具体的なコツと例をまとめました。
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1. 聞き役に徹する

子どもが話し始めたら、途中で遮らず最後まで耳を傾けましょう。「ながら聞き」は避け、子どもと向き合うことで「ちゃんと聞いてもらえている」という安心感を与えます。

• 良い例:
子ども:「模試の点数が全然上がらなくて焦る…」
親:「そうか、焦ってしまうんだね。それで、どの教科が特に難しかったの?」
→ ポイント:具体的な部分に寄り添いながら話を広げます。

• 悪い例:
親:「勉強してないからでしょ!」
→ NG:責める言葉は逆効果で、子どもが話す意欲をなくしてしまいます。

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2. 共感と理解を示す

子どもの話には感情的に寄り添い、「わかるよ」「それは辛いね」と共感する言葉を加えることが大切です。気持ちを受け止め、前向きな言葉を添えることで安心感を与えます。

• 具体例1:部活の試合で悔しい思いをした場合
子ども:「部活で試合に負けて、みんなに申し訳なくて…」
親:「自分を責めちゃうよね。でも一生懸命やったなら、それだけでもすごいことだよ。」

• 具体例2:テストの結果に落ち込んでいる場合
子ども:「英語、めちゃくちゃ頑張ったのに思ったより点数が悪くて…」
親:「そうか、それは悔しいね。でも、頑張った分だけ力はちゃんとついてるよ。」

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3. 「なぜ?」を「何?」に置き換える

「なぜ?」と聞くと、【 責められている 】ように感じさせることがあります。代わりに「何?」や「どうして?」や「何が原因だった?」と言うことで、子どもが(責められている感じがなくなり)自然に話しやすくなります。

• 具体例1:部活の試合で失敗した場合
子ども:「またミスして部活の試合で負けた…」
親:「そうだったんだね。何がうまくいかなかったのかな? 具体的にどの場面でミスしたの?」

• 具体例2:テストの点数が悪かった場合
子ども:「数学、50点しか取れなかった…」
親:「そっか、それは悔しかったね。何が難しかったのかな? どの問題が特にわからなかった?」

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4. 話の腰を折らない

子どもが話している途中で意見を挟まず、まずは最後まで聞きましょう。途中で話を遮ると、子どもは「話しても意味がない」と感じてしまいます。

• 具体例:授業で恥ずかしい思いをした場合
子ども:「今日、先生に当てられたけど、答えがわからなくて恥ずかしかった…」
親:「そうだったんだ。それでその後、どうなったの?」
→ ポイント:続きを促すことで、子どもが安心して話し続けられます。

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5. 質問の仕方を工夫する:オープンクエスチョンとクローズドクエスチョン
状況に応じて質問を使い分けることで、会話がスムーズになります。

• オープンクエスチョンの例:会話を広げたい場合
子ども:「友達とゲームしてた」
親:「どんなゲームをしたの?」「それってどんなルールなの?」

• クローズドクエスチョン(yesかnoで答える質問)の例:具体的な答えが欲しい場合

子ども:「今日、テストがあった」
親:「テスト、難しかった?」「何点取れたの?」

→ ポイント:会話を広げたいときはオープンクエスチョン、具体的な答えが必要なときはクローズドクエスチョンを使い分けましょう。リズムよく2つの聞き方を使うと子どもがより熱心に話してくれます。

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6. 沈黙を恐れない

会話中に子どもが黙ってしまったら、焦らず静かに待ちましょう。沈黙は、子どもが考えを整理する大切な時間です。この場合、難しいですが、ただ待つことが、その後の会話に一番効果的です。

• 具体的な声かけの例:
子どもが黙ったら:「今、考えてくれてるんだね。ゆっくりでいいから、思ったことがあったら教えて。」

• 自分に問いかけてみてください:
「お子様との対話中、お子様が沈黙したら、あなたは何秒?何分?待てますか?」

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7. 無理に話を引き出さない

子どもが「別に」「何もない」とそっけない場合でも、無理に質問を続けないことが大切です。

• 具体例:学校について聞いた場合
子ども:「学校、普通だった」
親:「そうなんだ。何か話したくなったらいつでも教えてね。」
→ ポイント:子どものペースを尊重しつつ、安心感を与えます。

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8. 褒められる部分を見つけて具体的にほめる

努力や行動を具体的に褒めることで、子どもは自信を持ちやすくなります。

• 具体例1:勉強の成果を褒める
子ども:「英語の点数、少し上がった!」
親:「前回より点数が上がったんだ!ちゃんと努力が結果に出てるね。」

• 具体例2:部活の努力を認める
子ども:「今日は部活で走り込みを最後まで頑張った!」
親:「最後までやり切ったんだね。それはすごいよ!次の試合にも活かせるね。」

• 具体例3:日常の小さな成長を褒める
子ども:「今日は自分で時間割を準備したよ。」
親:「自分で準備できたんだね。毎日のことをきちんとできるって、本当に素晴らしいことだよ。」

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9. 親自身の経験を適度に共有する

思春期の頃の自分の失敗や悩みを少し話すことで、子どもは親しみを感じやすくなります。

• 具体例:友達と意見が合わなかった場合
子ども:「友達と意見が合わなくて、なんか気まずい…」
親:「私も学生のとき、グループで意見がぶつかって困ったことがあったよ。そのときは…」

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10. 冷静さを保つ

子どもが感情的なときに親も一緒に感情的になると、話し合いが難しくなります。

• 具体例:学校に行きたくないと言い出した場合
子ども:「もう学校なんて行きたくない!」
親:「そう思うんだね。何があったのか聞かせてくれる?」
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11. 時間をかける

短期間で成果を求めず、長期的に子どもの話を聞き続ける努力をしましょう。「今日何かを話してくれなかった」と焦らず、何か月でも待つつもりで取り組むことが大切です。
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《 まとめ:上手くいく会話の原則  》

1. 聞く姿勢を大切にし、共感を示す。
2. 「なぜ?」を「何?」に置き換え、自然に話せる質問をする。
3. 「オウム返し」や「言い換え」で気持ちを整理し、前向きな言葉をかける。
4. 具体的な努力や行動を見逃さず、しっかり褒める。
5. 沈黙を恐れず、子どものペースを尊重する。
6. 焦らず、時間をかけて話せる関係を築く。

日々の小さな対話の積み重ねが、子どもとの信頼関係を深める一歩です。一つひとつのやり取りを大切にし、安心して話せる環境を作っていきましょう!

 

碩学ゼミナール塾長・衣笠 経歴
城西中学・城北高校・立命館大学経済学部卒 / 保険毎日新聞に記者として入社 / 帰省後、県内大手進学塾にて本部長・教務部長・校舎長、香川7校舎統括責任者。家族(嫁、長女、長男、母)をこよなく愛する。
毎日一人ひとり全員とあいさつをした後、父のお仏壇に手を合わせるのが日課。趣味は読書と野球観戦。好きな食べ物は辛口カレーライス。
元認定教育コーチ・青少年育成協会元研究員・子育てに関しての母親
セミナーも手がける。