2022/09/16 (金) - ブログ

ご褒美と教育効果の研究・紹介

城東高校・徳島市立高校理数科
県立上位高校(城南・城ノ内・徳島北高)
受験專門塾
碩学ゼミナールの衣笠です。

保護者の方に以下のメールを送りました
(一部変更しています)

成績向上に関してご褒美を与えることが有効かどうか?という点について、ハーバード大学のローランド・フライヤー教授が行った大規模実験について、中室牧子准教授が紹介しています。

中室牧子准教授の以下の文章をお読みください(衣笠が要点をまとめました)
【中室牧子准教授の経歴】
1998年慶應義塾大学卒業。米ニューヨーク市のコロンビア大学で博士号を取得(Ph.D)。日本銀行や世界銀行での実務経験を経て2013年から慶應義塾大学総合政策学部准教授に就任し、現在に至る。専門は教育を経済学的な手法で分析する「教育経済学」

ご褒美に関する大規模な実験
ご褒美が子どもの出席や学力にどのような因果効果をもつかについての研究を精力的に行っているのが、ジョン・ベイツ・クラーク賞の受賞者でもあるハーバード大学のローランド・フライヤー教授です。
米国のシカゴ、ダラス、ヒューストン、ニューヨーク、ワシントンD.C.の5都市で、ご褒美が子どもの教育にどのような影響をもたらすのかについて、大規模な実験を行っています。

大事なのは「インプット」か「アウトプット」か
フライヤー教授が実施した実験は、大きく分けると2種類ありました。
1つは、ニューヨークやシカゴで行われたもので、教育生産関数でいうところの「アウトプット」、すなわち学力テストや通知表の成績などが良くなること【結果】にご褒美を与えるというものです。「テストでよい点を取れば2500円のご褒美をあげます」というような設定です。

もう1つはダラス、ワシントンD.C.ヒューストンで行われた教育生産関数についての「インプット」、すなわち「本を読む」「宿題を終える」「学校にちゃんと出席する」「制服を着る」ということ【努力】にご褒美を与えるものです。
「本を1冊読んだら、200円のご褒美をあげます」というような設定です。

この2種類の実験のうち、どちらが子どもの学力向上に効果的だったのでしょうか?
ご褒美は「インプット」に対して与えるべき理由
実験の結果、学力テストの結果が良くなったのは、「インプット」にご褒美を与えられた子どもたちだったのです。なぜ、このような結果になったのでしょうか。

「インプット」にご褒美が与えられた場合、子どもにとって、何をすべきか【方法】は明確です。本を読み、宿題を終えればいいのです。(やる方法が明確にわかっている)
しかし、「アウトプット」にご褒美が与えられる場合、何をすべきか、具体的な【方法】は示されません。ご褒美は欲しい、やる気もある。しかし、どうすれば自身の学力を上げられるのかが、子ども自身にわからないのです。(達成する方法が明確ではない、わからない)
(努力しても良い結果が出るか不安)
ここから得られる極めて重要な教訓は、ご褒美は「テストの点数」などの「アウトプット」(結果・成果)ではなく、「本を読む」「宿題をする」などの「インプット」(努力)に対して与えるべきだということです。

フライヤー教授が、実験の後に行ったアンケート調査は、「アウトプット」にご褒美を与えることがうまくいかなかった理由をはっきりと示していました。
「アウトプット」にご褒美を与えられた子どもたちは「今後もっとたくさんのご褒美を得るためには何をしたらよいと思うか」という問いに対し、ほとんど全員が「しっかり問題文を読む」「解答を見直す」などのように、テストを受ける際の【テクニック】に関する答えに終始しており、「わからないところを先生に質問する」「授業をしっかり聞く」など、本質的に学力の改善に結びつくと考えられるような方法にはまったく考えが及んでいなかったことがわかります。

「内的インセンティブ」を締め出さないご褒美
ただし、ご褒美を与える代わりに、「一生懸命勉強するのが楽しい」というような、好奇心や関心によってもたらされる「内的インセンティブ」を失わせてしまうのではないかという懸念があります。
この点についても、フライヤー教授は検証を行っています。実験の後に行ったアンケート調査の中で、心理学の手法を用いて「内的インセンティブ」を計測したところ、ご褒美の対象となった子どもたちと、対象にならなかった子どもたちの間には統計的に有意な差が観察されませんでした。
すなわちご褒美は、子どもの「一生懸命勉強するのが楽しい」という気持ちを失わせることはなかったのです。

これまでの研究蓄積を鑑みれば、私は、ご褒美で子どもを釣る「目の前にニンジン作戦」に反対ではありません。「ご褒美」の設計を正しく行えば、「一生懸命勉強するのが楽しい」という気持ちを失わせることなく、子どもの学力を向上させることができるはずだからです。

【結論】
子どもの努力に対して、ご褒美を与えると、成績向上にハッキリとした効果がある。
それは、「一生懸命勉強するのが楽しい」という本来の学ぶ意欲を失わせない。

【碩学ゼミナールの考え】
上記実験結果を受けて、
生徒の「努力」に対して、何らかの「ご褒美」を授与することも検討しています。

昔は、運動中に水を飲むと運動能力が向上しないと、強く信じられていました。しかし、
最新医学では、それが根拠のないものであることは、周知の事実です。
そこで、十分な検討を加えた上で、フライヤー教授の実験結果を塾の運営に生かしていきたいと考えています。

ご理解いただければ幸いです。

上記の件を含めて、ご質問、ご要望受け付けています。
頂いたものに関しては、全力で対応します。
よろしくお願いします。
衣笠

 

碩学ゼミナール塾長・衣笠 経歴
城西中学・城北高校・立命館大学経済学部卒 / 保険毎日新聞に記者として入社 / 帰省後、県内大手進学塾にて本部長・教務部長・校舎長、香川7校舎統括責任者。家族(嫁、長女、長男、母)をこよなく愛する。
毎日一人ひとり全員とあいさつをした後、父のお仏壇に手を合わせるのが日課。趣味は読書と野球観戦。好きな食べ物は辛口カレーライス。
元認定教育コーチ・青少年育成協会元研究員・子育てに関しての母親
セミナーも手がける。