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受験專門塾
碩学ゼミナールの衣笠です。
子どもの心をひらく
親の「話の聞き方」10のコツ【会話・実例付き】
碩学ゼミナール 塾長 衣笠邦夫
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はじめに
中学生という時期は、「自分が何者か」「他人にどう見られているか」に強い関心を持ち始める、心理的に非常に繊細な時期です。
親のちょっとした言葉や態度に深く傷つくこともあれば、逆にそのたった一言で立ち直ることもあります。
大切なのは、「わが子に何を言うか」よりも、「どう聞くか」です。
本稿では、日々の家庭でできる「親の聞き方10のコツ」を、中学生の会話例と心理的な解説つきでまとめました。
特に、誤解されやすい「なぜ」と「何が」の違いについても、丁寧に考察しています。
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① ながら聞きをやめる
【会話例】
子:「今日さ、部活で先輩とちょっとあって…」
親:(スマホを見ながら)「ふーん、で?」
子:「……やっぱいいや」
【解説】
子どもにとって「親がちゃんと聞いてくれているかどうか」は、話の内容以上に重要です。
大人にとっては“聞いているつもり”でも、目線や身体の向き、手の動きが違うと、それだけで「興味ないんだ」と受け取られてしまいます。
集中して聞いているときの、相手のちょっとした顔の動き、間、呼吸の変化──
それらすべてが「自分を大事にしてくれている証拠」になるのです。
また、アップル創業者のスティーブ・ジョブズは、家庭での食卓にスマートフォンを持ち込まなかったことで知られます。理由は「子どもとの対話を何より大切にしたかったから」。
集中して聞くことで、相手は「私は大事にされている」と感じるのです。
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② 話の腰を折らない
【会話例】
子:「先生に呼ばれて…」
親:「また?何かやらかしたの?」
子:「違うし……。もういいわ」
【解説】
親が「良かれと思って」口をはさむと、子どもの話す意欲は急速にしぼみます。
とくに中学生は、「言葉にする前に自分の気持ちを整理する力」がまだ未熟です。
途中で言葉を遮られると、感情の途中で“割り込まれる”ことになり、「もう話さない」と壁をつくってしまいます。
沈黙の時間があっても、あえて待つことで、子どもは「この人は最後まで聞いてくれる」と感じ、言葉を選びながら話すようになります。
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③ 否定しない
【会話例】
子:「理科のテスト、全然できんかった…」
親:「だから言ったじゃん、ちゃんと復習しろって」
子:「……」
【解説】
たとえ親の言っていることが正しくても、子どもにとっては「それを今、言われたくなかった」が本音です。
「正論」が必要なのは、“共感されたあと”です。
まず「そうだったんだね」「悔しかったね」と感情を受け止めてから、ようやく子どもは“次の一歩”を踏み出そうとします。
否定されると、心のシャッターは一瞬で下ります。
逆に、「一度受け止めてもらえた経験」は、長期的に親子の信頼を深める礎となります。
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④ うなずきながら聞く
【会話例】
子:「今日、先生がちょっと変なこと言ってさ…」
親:(うなずきながら静かに聞く)
子:「それで、○○も笑ってて…」
【解説】
言葉を発さずとも、うなずき一つで「ちゃんと聞いているよ」が伝わります。
中学生は、まだ“言葉にしきれない気持ち”を話していることが多くあります。
そこに大人が、うなずきや表情で応答してくれることで、安心しながら言葉を組み立てていくことができるのです。
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⑤ 相づちを打つ(=関心を示す)
【会話例】
子:「○○が急に無視してきてさ…」
親:「そうなん?それはきついな」
子:「うん。でも他の子は普通だったから、まだマシかなって思って」
【解説】
ただ「聞いている」だけでは、子どもは「届いてない」と感じます。
相づちというのは、「あなたの話に私は関心をもっている」という感情のリアクションです。
話の内容が重くなくても、「そうなんだね」「それは嬉しかったな」「そっか、嫌だったね」といった短い返しが、会話をつないでくれます。
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⑥ オウム返しをする(リフレクション)
【会話例】
子:「○○にひどいこと言われて…」
親:「ひどいこと言われたんだね」
子:「うん、なんか“調子乗ってる”って」
【解説】
子どもの言ったことをそのまま繰り返す──
これは心理学で「リフレクション(反復)」と呼ばれる聞き方で、「私はあなたの話をきちんと受け取っていますよ」というメッセージになります。
たとえば、子どもが「部活のことでイライラしてる」と言ったとき、
親が「部活のことでイライラしてるんだね」と返す。
たったこれだけで、子どもは自分の気持ちが言葉として受け止められたと実感し、続きを話しやすくなります。
この「オウム返し」は、実は明石家さんまさんがテレビ番組で頻繁に使っている会話術でもあります。
彼は、ゲストの発言をほぼそのまま言い直すことで、
「自分の言ったことがちゃんと受け止められた」とゲストに思わせ、自然と会話を深めていきます。
たとえば──
ゲスト:「昨日、駅で財布落としたんですよ」
さんま:「駅で財布落とした!? それ痛いやろ~!」
ゲスト:「そうなんですよ、しかも全財産入ってて…」
このように、相手の言葉を繰り返しつつ、少しだけ自分のリアクションを加えることで、
相手は安心し、会話をさらに続けたくなるのです。
子どもとの対話でも、「何を話すか」よりも、「どう返すか」が会話の流れを決めます。
特に思春期の子は、内容の正しさより「受け止めてもらえたかどうか」に敏感です。
オウム返しは、子どもの心をひらく“最初のカギ”になります。
芸人の世界でも、教育の現場でも、共通して大切にされている技術なのです。
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⑦ 【親が“感情の翻訳者”になるということ】
【会話例】
子:「今日さ、グループで発表の準備してたのに、Bがぜんぜん手伝ってくれなくてムカついた。言ったら“別にいいじゃん”とか言われてさ…なんか、もうやる気なくした。」
親:「一生懸命やろうとしてたのに、ちゃんと向き合ってもらえなくて、がっかりしたんだね。」
【解説】
子どもが苛立ちや不満をぶつけるとき、その背景には「わかってほしい」「一緒に頑張ってほしい」という思いが潜んでいます。
しかし、そうした本心は往々にして感情の混乱に埋もれ、自分でも正確に言葉にできないことが多いのです。
だからこそ親は、ただ表面的に聞くだけではなく、「こういう気持ちだったのかな」と丁寧に受け止めながら、子どもの気持ちを少し整理された言葉に“言い換えて”返してあげる必要があります。
これは単なる同意ではなく、子ども自身も気づいていない思いに、言葉のかたちを与える行為です。
心理学ではこの関わりを「感情の言語化(emotion labeling)」あるいは「感情の再構成」と呼びます。
親がこうした“翻訳者”の役割を果たすことで、子どもは自分の感情を理解しやすくなり、心を落ち着ける足がかりを得ることができます。
親が「聞く側」として、子どもの混乱した感情を丁寧に汲み取り、それを静かに言葉に直して返してあげる――この関わりは、子どもにとって「心の整理」を助け、同時に「親に話すと落ち着ける」という信頼感を育む非常に大切な対応です。
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⑧ 褒められる部分を見つけて褒める
【会話例】
子:「マジでムカついたけど、言い返さなかった」
親:「自分で抑えたんだ。えらいな。それってすごいことだよ」
【解説】
“叱るところ”を探すより、“褒めるポイント”を見つけて意識的に取り上げましょう。
努力の過程や感情のコントロール、踏みとどまった判断など、日常には「見逃されがちな褒めポイント」がたくさんあります。
マイクロソフト創業者ビル・ゲイツの母は、彼が子ども時代に失敗しても「でも、工夫していたのはえらい」と必ず何かを褒めていたそうです。褒めは意志と才能を伸ばす土壌になります。
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⑨ 質問をして話をふくらませる
【会話例】
子:「なんか部活でみんな意見バラバラだった」
親:「どんな意見が出てたの?あなたはどう考えてたの?」
【解説】
質問は、「聞く姿勢」の強い表れです。
ただし、詮索や尋問にならないよう、「答えさせる」ではなく「考えを引き出す」質問を心がけましょう。
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⑩ 「なぜ?」より「何が?」で聞く
【比較例】
✖「なんでそんなことしたの?」
→ 責められているように感じ、「もういい」と黙ってしまう。
◎「何があったの?」
→ 状況を説明する余地があり、「実は○○に嫌なこと言われてて…」と話しやすくなる。
【解説】
「なぜ?」という問いは、原因を聞いているつもりでも、子どもには“責められている”と感じられやすい言葉です。
一方、「何が原因だった?」と聞くと、状況を共有するための質問と受け取られやすく、冷静に会話を進められます。
NHKプロフェッショナルにも出演した外科医・吉岡秀人氏は、ミスした研修医に「なぜ失敗した?」ではなく「何が起きた?」と問います。これは責めるのではなく、原因を冷静に分析し、次へつなげる問い方です。子どもにも同じ姿勢が必要です。
心理学でも、「なぜ」は防衛反応を生みやすいとされ、「何が」「どこが」「どういうときに」などの具体的な言い換えが効果的であるとされています。
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結びに
聞くことは、受け入れることです。
中学生の不器用な言葉の奥には、「本当はわかってほしい」という小さな声がいつもあります。
子どもが話したとき、
「この人になら話せる」と思ってもらえるかどうか――
それが、信頼を育てるすべての出発点です。
どうか今日、ほんの3分でも、「耳を傾けるだけの時間」が、親子の間に生まれますように。
参考資料 2025年3月時点 各高校の公式ホームページの発表
国公立大学合格人数【最新情報】(現役生合計!)
城東高校 162名(58.9%)(卒業生275名)
城南高校 168名(56%)(卒業生300名)
徳島市立高校 141名(44.5%)(卒業生317名)
城ノ内中等教育高校(城ノ内高校)86名(67.7%)(卒業生127名)
徳島北高校 150名(56.6%)(卒業生265名)
城北高校 67名(24.7%)(卒業生271名)
鳴門高校 21名(7.8%)(卒業生270名)
◎合格者は、全て正確な数字です。卒業生の人数が、HPの発表と比べてわずかに異なる場合が考えられます
その場合、国公立大学への合格割合が0.5%程度変動する場合があります。ご了解頂ければ幸いです。
碩学ゼミナール塾長・衣笠 経歴
城西中学・城北高校を経て、立命館大学経済学部を卒業。
大学卒業後は「保険毎日新聞」に記者として入社し、報道の現場で社会の現実を見つめる日々を送る。
その後、地元に戻り、県内大手進学塾にて本部長・教務部長・校舎長を歴任。香川県下7校舎の統括責任者として、多くの生徒の進路指導に携わってきた。
現在も毎朝、水を2杯飲み、5分間の瞑想と8分間の感謝日記、
軽い筋トレで心と身体を整えることが日課となっている。
科学・医学・教育に関する専門書を好んで読み、授業計画では思春期心理学や実証的な教育実践の論文を積極的に取り入れている。
どれだけ経験を重ねても、学びを止めた瞬間に傲慢が生まれる。
それが生徒の信頼を失うことにつながると、常に自戒している。
また、「どれほど立派な授業をしても、生徒が本当に成長しなければ価値がない」との考えをもつ。
だからこそ、入塾した生徒一人ひとりに真摯に向き合い、
保護者のご期待にも、誠実に応え続けることを自身の使命としている。
座右の銘は、「愚者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶ」。
趣味は読書と野球観戦。家族とともに、辛口カレーライスをこよなく愛す。
元認定教育コーチ、青少年育成協会元研究員。母親向けの子育てセミナーの講師も手がける。