城東高校・徳島市立高校理数科
県立上位高校(城南・城ノ内・徳島北高)
受験專門塾
碩学ゼミナールの衣笠です。
「褒めること」は子育ての要――その価値と危険性を知り、「勇気づけ」「観察・伝達」「感謝」で磨く関わり方を!
(12月6日午前1時57分に大幅修正した再編集版です)
親に褒められた経験は、子どもの自信を育む大切な要素です。「認められる喜び」を感じることは、子どもの成長にとって大きな力となります。しかし、何でも褒めてしまうことには注意が必要です。
褒める行為が過剰になると、子どもは【外部からの評価】に依存し、自主性や内発的な成長の芽を失ってしまう危険性があるからです。
子育てにおいては、「褒める」ことを正しく活用しつつ、より効果的なアプローチを取り入れる必要があります。
子どもの健全な成長を支えるには、親や指導者がどのように接するかが鍵となります。
アドラー心理学、モンテッソーリ教育、そして佐々木正美医師の考え方は、いずれも「子どもの内発的動機」を尊重し、「ほめること」のリスクを指摘しながら、「勇気づけ」「観察・伝達」「感謝の心」を基盤とした効果的な育て方を提案しています。
本稿では、それぞれの理論を具体例を交えて紹介し、子どもの成長を支えるための実践的なヒントを探ります。
佐々木正美医師は、「ほめることは難易度が高い」と述べています。一見、簡単に思える「ほめる」という行為ですが、適切に行わないと子どもの成長にマイナスの影響を与えることがあります。そのリスクを以下に示します。
(1) 外部評価に依存させるリスク
子どもをほめる行為が安易に乱用されると、子どもは【他者からの評価】を基準に行動するようになり、自主性や自己決定感を損なう
可能性があります。
(2) 成果のみを評価し、努力や過程を軽視する
成果だけに注目してほめると、子どもは努力や取り組みのプロセスを軽視し、「結果がすべて」と考えるようになります。
(3) 親子間の上下関係を強化してしまう
ほめる行為は、親が「評価する側」、子どもが「評価される側」という《 上下関係 》を意識させることがあります。これにより、対等な信頼関係が築きにくくなることがあります。
アドラー心理学における「勇気づけ」とは、他者や自分自身が困難や課題に直面した際に、前向きな気持ちを育み、自信を持って行動できるよう支える方法であり、子どもの努力や意欲を認め自主性を促す一方で、評価を伴う「ほめる」行為が行動を他者の目に左右されやすくするのに対し、内面的な力や可能性を引き出すことを目的としています。
勇気づけの基本は、相手の存在そのものを認めることです。評価や批判ではなく、「あなたはここにいるだけで価値がある」というメッセージを伝えます。
相手が達成した結果ではなく、努力やプロセスに注目し、それを言葉にします。
相手の気持ちに寄り添い、「あなたの気持ちは理解されている」と感じさせます。
「できるはず」と信じていることを相手に伝え、自分自身への信頼を育てます。
単なる褒め言葉ではなく、具体的な行動を指摘することで、相手が「自分がどうして評価されているか」を理解しやすくします。
失敗を否定的に捉えず、学びの機会として勇気づけます。
相手が自分の行動に責任を持ち、自立できるようサポートします。決定を押し付けるのではなく、選択肢を提示します。
他者を勇気づけるためには、まず自分自身に対しても肯定的な言葉をかける習慣を持つことが大切です。
アドラーの勇気づけは、「相手の価値を認め、信じる」というシンプルな哲学に基づいています。この実践を日常で繰り返すことで、相手や自分自身の内なる力を引き出し、人間関係をより良いものにすることができると考えられています。
アメリカのオバマ元大統領や棋士の藤井聡太名人が受けたことで有名なモンテッソーリ教育では、子どもが自主的に学ぶ力を育てることを重視します。「ほめること」は子どもの学びを制限する可能性があるため、慎重に扱われます。
これは、子どもの内発的な動機づけを大切にするためです。外的な褒め言葉に頼りすぎると、子どもが他者の評価を基準に行動するようになり、自主性や自立心が育ちにくくなる可能性があると考えられています。
モンテッソーリ教育では、外的な褒めよりも内発的な満足感を促す環境づくりを推奨しています。
たとえば、子どもが掃除を終えた際には、「机がピカピカになって気持ちがいいね」と結果を「観察」し、感想を共有することを重視します。これにより、子どもは「自分が行動することで周囲が良くなる」という実感を持ち、自主性が育ちます。
モンテッソーリ教育の褒め方の特徴
モンテッソーリ教育の褒め方は、単なる「すごいね!」にとどまらず、子どもの行動や成長を深く『観察』し、それを言葉にして『伝えること』を大切にします。これにより、子どもが「他人に褒められるため」ではなく、「自分の成長を楽しむため」に生るようになると言われています。
佐々木正美医師は、子どもに感謝を伝えることで、安心感や信頼感を育む重要性を強調しています。感謝には「評価」の要素が含まれず、
子どもの行動そのものを受け入れる力があります。
(1) 感謝がもたらす安心感
感謝を通じて、親が子どもの存在そのものを価値あるものとして認めることができます。
(2) 感謝は親子の信頼関係を深める
感謝を伝えることで、子どもは親との信頼関係を強化し、安心して行動できるようになります。
(3) 感謝は内発的動機を育てる
感謝の言葉は、子どもが「自分の行動が周囲に良い影響を与える」と気づくきっかけを作ります。
佐々木医師が語る「感謝」の背景には、「子どもの存在そのものを受け入れる」という姿勢があります。これにより、子どもは無条件の愛情を感じ、自己肯定感が高まります。
アドラー心理学、モンテッソーリ教育、佐々木正美医師の考えには、子どもの自主性や内発的動機を育てる共通のアプローチがあります。
「ほめること」は一歩間違えると外部評価に依存させるリスクがありますが、「勇気づけ」や「感謝」を通じて子どもの行動や努力を認める
ことで、安心感や主体性を育むことができます。
日常の接し方を見直し、具体的な実践を通じて、子どもは自己肯定感を育み、挑戦する力を養えます。
親や指導者が「褒めること」の重要性と危険性を十分理解し、内発的な成長を尊重することが、子どもの健全な成長につながります。
碩学ゼミナール塾長・衣笠 経歴
城西中学・城北高校・立命館大学経済学部卒 / 保険毎日新聞に記者として入社 / 帰省後、県内大手進学塾にて本部長・教務部長・校舎長、香川7校舎統括責任者。家族(嫁、長女、長男、母)をこよなく愛する。
毎日一人ひとり全員とあいさつをした後、父のお仏壇に手を合わせるのが日課。趣味は読書と野球観戦。好きな食べ物は辛口カレーライス。
元認定教育コーチ・青少年育成協会元研究員・子育てに関しての母親
セミナーも手がける。