2024/12/05 (木) - ブログ

「褒めること」の価値と危険性と「内発的動機」の尊重!(再編集版)

城東高校・徳島市立高校理数科
県立上位高校(城南・城ノ内・徳島北高)
受験專門塾
碩学ゼミナールの衣笠です。

 

「褒めること」は子育ての要――その価値と危険性を知り、「勇気づけ」「観察・伝達」「感謝」で磨く関わり方を!

(12月6日午前1時57分に大幅修正した再編集版です)

 

親に褒められた経験は、子どもの自信を育む大切な要素です。「認められる喜び」を感じることは、子どもの成長にとって大きな力となります。しかし、何でも褒めてしまうことには注意が必要です。

褒める行為が過剰になると、子どもは【外部からの評価】に依存し、自主性や内発的な成長の芽を失ってしまう危険性があるからです。

子育てにおいては、「褒める」ことを正しく活用しつつ、より効果的なアプローチを取り入れる必要があります。

子どもの健全な成長を支えるには、親や指導者がどのように接するかが鍵となります。

アドラー心理学、モンテッソーリ教育、そして佐々木正美医師の考え方は、いずれも「子どもの内発的動機」を尊重し、「ほめること」のリスクを指摘しながら、「勇気づけ」「観察・伝達」「感謝の心」を基盤とした効果的な育て方を提案しています。

本稿では、それぞれの理論を具体例を交えて紹介し、子どもの成長を支えるための実践的なヒントを探ります。

 

  1. ほめることの難しさとリスク

佐々木正美医師は、「ほめることは難易度が高い」と述べています。一見、簡単に思える「ほめる」という行為ですが、適切に行わないと子どもの成長にマイナスの影響を与えることがあります。そのリスクを以下に示します。

 

(1) 外部評価に依存させるリスク

子どもをほめる行為が安易に乱用されると、子どもは【他者からの評価】を基準に行動するようになり、自主性や自己決定感を損なう

可能性があります。

  • 具体例:
    中学生の子どもが試験で高得点を取った際、「よく頑張ったね、さすが!」と「高得点」を強調し過ぎてほめると、子どもは「高得点でなければ認められない」と感じることがあります。

 

(2) 成果のみを評価し、努力や過程を軽視する

成果だけに注目してほめると、子どもは努力や取り組みのプロセスを軽視し、「結果がすべて」と考えるようになります。

 

  • 具体例:
    体育の大会で良い結果を残した子どもに「すごい!優勝なんて偉いね!」と「結果だけ」を評価すると、次回も優勝しなければならないというプレッシャーを感じることがあります。

 

(3) 親子間の上下関係を強化してしまう

ほめる行為は、親が「評価する側」、子どもが「評価される側」という《 上下関係 》を意識させることがあります。これにより、対等な信頼関係が築きにくくなることがあります。

 

 

  1. アドラー心理学における「勇気づけ」の重要性

アドラー心理学における「勇気づけ」とは、他者や自分自身が困難や課題に直面した際に、前向きな気持ちを育み、自信を持って行動できるよう支える方法であり、子どもの努力や意欲を認め自主性を促す一方で、評価を伴う「ほめる」行為が行動を他者の目に左右されやすくするのに対し、内面的な力や可能性を引き出すことを目的としています。

  1. 相手をありのままに受け入れる

勇気づけの基本は、相手の存在そのものを認めることです。評価や批判ではなく、「あなたはここにいるだけで価値がある」というメッセージを伝えます。

  • 具体例: 子どもがミスをしても、「失敗しても挑戦したことが素晴らしいね」と言う。
  1. 小さな成長や努力を認める

相手が達成した結果ではなく、努力やプロセスに注目し、それを言葉にします。

  • 具体例: 部下がプロジェクトに挑戦した際、「結果はどうであれ、しっかり準備した努力が見えるよ」と伝える。
  1. 共感を示す

相手の気持ちに寄り添い、「あなたの気持ちは理解されている」と感じさせます。

  • 具体例: 「その場面で緊張するのは当然だね。私も同じだったらそう感じると思う」と話す。
  1. 相手の能力を信じる

「できるはず」と信じていることを相手に伝え、自分自身への信頼を育てます。

  • 具体例: 「きっと自分で答えを見つけられると思うよ。サポートが必要なら言ってね」と伝える。
  1. 具体的なフィードバックをする

単なる褒め言葉ではなく、具体的な行動を指摘することで、相手が「自分がどうして評価されているか」を理解しやすくします。

  • 具体例: 「今日は早く準備を終えてくれたおかげで、全体がスムーズに進んだよ」と伝える。
  1. 恐れや失敗を「学び」として受け止める姿勢を促す

失敗を否定的に捉えず、学びの機会として勇気づけます。

  • 具体例: 「ミスしたことで次に何を注意すべきかが分かったね。これも成長の一歩だよ」と伝える。
  1. 相手に選択肢と責任を与える

相手が自分の行動に責任を持ち、自立できるようサポートします。決定を押し付けるのではなく、選択肢を提示します。

  • 具体例: 「どちらを選ぶのも自由だけど、自分で決めたら後悔しないようにね」と励ます。
  1. 自分自身を勇気づける

他者を勇気づけるためには、まず自分自身に対しても肯定的な言葉をかける習慣を持つことが大切です。

  • 具体例: 「完璧でなくてもいい、今日もよく頑張った」と自分に言い聞かせる。

アドラーの勇気づけは、「相手の価値を認め、信じる」というシンプルな哲学に基づいています。この実践を日常で繰り返すことで、相手や自分自身の内なる力を引き出し、人間関係をより良いものにすることができると考えられています。

 

 

  1. モンテッソーリ教育の視点:褒める代わりに「観察」する

アメリカのオバマ元大統領や棋士の藤井聡太名人が受けたことで有名なモンテッソーリ教育では、子どもが自主的に学ぶ力を育てることを重視します。「ほめること」は子どもの学びを制限する可能性があるため、慎重に扱われます。

これは、子どもの内発的な動機づけを大切にするためです。外的な褒め言葉に頼りすぎると、子どもが他者の評価を基準に行動するようになり、自主性や自立心が育ちにくくなる可能性があると考えられています。

モンテッソーリ教育では、外的な褒めよりも内発的な満足感を促す環境づくりを推奨しています。
たとえば、子どもが掃除を終えた際には、「机がピカピカになって気持ちがいいね」と結果を「観察」し、感想を共有することを重視します。これにより、子どもは「自分が行動することで周囲が良くなる」という実感を持ち、自主性が育ちます。

 

モンテッソーリ教育の褒め方の特徴

  1. 行動や努力を客観的に「観察」する
  • モンテッソーリ教育では、「すごいね!」「偉いね!」といった漠然とした褒め方ではなく、子どもの行動や努力を具体的に「観察」し、それを言葉にします。
  • :
    • 「このパズル、最後までよく集中して完成させたね」  ⇒このあと「立派だね!」と言えば「評価」となります。
    • 「自分で計画して、この棚をきれいに片付けられたんだね」  ⇒同じく、これに続けて「すごい!」と言えば、子どもを
    •  「評価」したことになります。
    • ただし、親が本当にすごいと思ったら「すごい!」もOK (言葉で子どもをコントロールしようと思ったら失敗するという戒め)
  1. 内発的な満足感を重視する
  • 子どもが「やって良かった」「自分でできた」と感じられるよう、結果や評価ではなく、行動そのものに価値を置きます。
  • :
    • 「きれいに並べ終わったとき、自分でもうれしかった?」
    • 「難しいけど挑戦してみたね。どんなところが楽しかった?」
  1. 他者との比較を避ける
  • 他の子どもや過去の成果との比較はせず、その子ども自身の「成長」や「取り組み」を評価します。
  • :
    • 「前よりもずっとじっくり考えて進められるようになったね」
    • 「あなたらしいアイデアが詰まっている作品だね」
  1. 親や教師の評価を押し付けない
  • 褒め言葉ではなく、子ども自身が「どのように感じたのか」を問いかけ、自己評価を促します。
  • :
    • 「どうやってこれを完成させたの?」
    • 「やってみてどう感じた?」
  1. 長期的な成長を促す言葉を使う
  • 褒めることを通じて、短期的な満足ではなく、継続的な「挑戦や努力」を促します。
  • :
    • 「今日はこれをやり遂げたね。次はどんなことに挑戦してみたい?」

モンテッソーリ教育の褒め方は、単なる「すごいね!」にとどまらず、子どもの行動や成長を深く『観察』し、それを言葉にして『伝えること』を大切にします。これにより、子どもが「他人に褒められるため」ではなく、「自分の成長を楽しむため」に生るようになると言われています。

 

  1. 佐々木正美医師が強調する「感謝」の力

佐々木正美医師は、子どもに感謝を伝えることで、安心感や信頼感を育む重要性を強調しています。感謝には「評価」の要素が含まれず、

子どもの行動そのものを受け入れる力があります。

 

(1) 感謝がもたらす安心感

感謝を通じて、親が子どもの存在そのものを価値あるものとして認めることができます。

  • 具体例:
    中学生が家族の食事を配膳した際、「ありがとう。みんながスムーズに食事できて助かったよ」と伝えることで、役立つ存在であると感じてもらえます。

 

(2) 感謝は親子の信頼関係を深める

感謝を伝えることで、子どもは親との信頼関係を強化し、安心して行動できるようになります。

 

(3) 感謝は内発的動機を育てる

感謝の言葉は、子どもが「自分の行動が周囲に良い影響を与える」と気づくきっかけを作ります。

  • 具体例:
    テストの成績が思わしくなかった子どもに対し、「問題を見直してくれてありがとう。次にどうすればもっと解けるか、一緒に考えよう」と伝えることで、前向きな意欲を育むことができます。
  1. 感謝と受容の姿勢

佐々木医師が語る「感謝」の背景には、「子どもの存在そのものを受け入れる」という姿勢があります。これにより、子どもは無条件の愛情を感じ、自己肯定感が高まります。

  • 具体例:
    「あなたがいてくれるだけで、私たちはとても幸せだよ」と伝えることで、子どもは存在そのものが愛されていると実感します。
  1. まとめ:健全な成長を支えるために

アドラー心理学、モンテッソーリ教育、佐々木正美医師の考えには、子どもの自主性や内発的動機を育てる共通のアプローチがあります。

「ほめること」は一歩間違えると外部評価に依存させるリスクがありますが、「勇気づけ」や「感謝」を通じて子どもの行動や努力を認める

ことで、安心感や主体性を育むことができます。

 

日常の接し方を見直し、具体的な実践を通じて、子どもは自己肯定感を育み、挑戦する力を養えます。

親や指導者が「褒めること」の重要性と危険性を十分理解し、内発的な成長を尊重することが、子どもの健全な成長につながります。

 

碩学ゼミナール塾長・衣笠 経歴

城西中学・城北高校・立命館大学経済学部卒 / 保険毎日新聞に記者として入社 / 帰省後、県内大手進学塾にて本部長・教務部長・校舎長、香川7校舎統括責任者。家族(嫁、長女、長男、母)をこよなく愛する。

毎日一人ひとり全員とあいさつをした後、父のお仏壇に手を合わせるのが日課。趣味は読書と野球観戦。好きな食べ物は辛口カレーライス。

元認定教育コーチ・青少年育成協会元研究員・子育てに関しての母親

セミナーも手がける。